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「あの……、美波さん降りないんっすか?」
「いや…、降りる降りる…」
いつもと同じように春斗に送ってもらったんだけど、駐輪場には葉太のバイクしかないことに気づいた。
希龍くんのバイクはないし、近くに安田さんの車もない。
希龍くんは用事があるって言ってたし、安田さんはきっと仕事だろう。
……要するに、あの家には葉太しかいないってこと。
「あの、美波さん?」
「…何?」
なかなかバイクから降りないあたしを見て、春斗が困った顔をしてる。
降りなきゃいけないのは分かってる。
でも、あの家には葉太しかいないんだよ?
「降りないと家に入れませんし…、今日寒いですから、美波さん風邪引きますよ?」
「引かないから大丈夫。」
年下引き留めて何してんだって話だけど、今のあたしに春斗のことを気にかける余裕なんてものはない。



