「おいで」

そう言ってあたしを引っ張る。

安田さんの部屋は暑すぎるくらいに暖房がきいていて、生ぬるい空気が体を包みこんだ。


「あつ……」


希龍くんの部屋とは違って、生活感の溢れる安田さんの部屋。

甘い匂いだってしない。


「俺の部屋じゃ寝れなかった?」

「…ううん、そうじゃなくて、さっきの…」


さっきの、キス。

見てたの?


「見た…?」

「……うん、見たけど…邪魔してごめんね。」

「違うよ……邪魔だったわけじゃなくて…、あたし葉太とはそういう関係じゃないから。誤解されてるかなって…」


興味なかったかな。

あたしと葉太の関係なんて、希龍くんには関係ない?

「…へぇ、そっか。でも多分、葉太は本気だよ。酔ってたからとか、関係ない。冗談であんなこと言うやつじゃないから。」

葉太が本気であたしのことを好きだって言ってるの?