いきなりの行動だったから、驚いて何も言えなかった。
「あなたが美波ちゃんなんだ!」
……どういうこと?
「え…あの……どういうこと?」
何がなんだかあたしには全く分からない。
この子とあたしは初めて話したし、あたしは今までこの子のことを知らなかったんだから。
「あれ、聞いてないの?」
…聞いてない、って…何を?
あたしの顔を言葉で表すならきっと、キョトンだろう。あたし今まさにキョトンとしてる。
「ごめん…、何のことかさっぱり…」
「そっかそっか、聞いてないかぁ…」
階段に座って眼鏡を外した彼女は、ポケットからピンを取り出して前髪をあげた。
風でフワフワした髪が揺れる。
綺麗な顔がハッキリ見えるようになった。
その横顔に、見覚えがある。
だけど、いつ見たのかは分からない。



