tender dragon Ⅰ


いきなりの行動だったから、驚いて何も言えなかった。

「あなたが美波ちゃんなんだ!」


……どういうこと?


「え…あの……どういうこと?」


何がなんだかあたしには全く分からない。

この子とあたしは初めて話したし、あたしは今までこの子のことを知らなかったんだから。


「あれ、聞いてないの?」


…聞いてない、って…何を?

あたしの顔を言葉で表すならきっと、キョトンだろう。あたし今まさにキョトンとしてる。


「ごめん…、何のことかさっぱり…」

「そっかそっか、聞いてないかぁ…」


階段に座って眼鏡を外した彼女は、ポケットからピンを取り出して前髪をあげた。

風でフワフワした髪が揺れる。

綺麗な顔がハッキリ見えるようになった。

その横顔に、見覚えがある。

だけど、いつ見たのかは分からない。