tender dragon Ⅰ


「そんなことないよ」

そう言って眼鏡を外した。

「あ、もうチャイム鳴っちゃうね。」


眼鏡を外してるのに、遠くにある時計の時間を見てチャイムが鳴りそうだと言う。

この子、眼鏡を外してもちゃんと見えてるんじゃないかな?


「ねぇ、その眼鏡、度入ってるの?」

少なくともあたしにはそんな風に見えない。

外しても見えてなきゃ、時計なんて見えるはずないもん。

あたしの質問に対して、しまった、というような顔をした女の子は諦めたように笑うと再び眼鏡をかけた。


「入ってないよ。よく分かったね」

「やっぱり。じゃなきゃ、あんな遠くにある時計の時間なんて見えるはずないもん。」