鳴り響くサイレン。

たくさんの人ごみ。


警察署からパトカーを飛ばしても(舌噛みそうになった)30分はかかる距離にある現場は三階建ての美術館。

何を飾ってんのかは興味ないし行ったことないからわからないけど、


「は?皆帰っただと・・・!?」

声でけぇよ
テメェは。

「ぇえ、みなさん持ち場に戻るから
後は任せるって」

「持ち場って・・・輩の持ち場はここだろう!」

そう叫びながら邦是の姉は黄色い【立入禁止】のテープを乗り越えようとする。

「ちょっ、邦是さん〜。やめてくださいよ〜。」

気の弱そうな中年の警官は邦是の姉をいそいそとさえぎりたい。

しかし邦是の姉はキッと中年を睨み

「なんで駄目なんだ!?わたしは刑事だ!

なぜ犯罪王子現場を見ちゃいけないのだ!!」

と耳に突き刺さる怒鳴り声をあげた。

つーか犯罪王子って呼んでんのかよ。

なんか緊張感ねぇよ犯罪王子って。


「わかっているわかっている。
でも・・・君と同じ犯罪王子関連の事件を調べる仲間達は現場を見ずに帰っていかれたんだから、

『現場検証の必要なし』ってことじゃぁないのですかね?」

「そんなわけないだろ?輩はろくに仕事しない。あえて言ったらただのカスだ!」

口悪ッ

「どーせまた危ないからとかヘタレな理由なんだろう!?

犯罪王子は無駄な殺人や妨害が多いが、侵入してから30分以上は居座らないというデータが取れている!」

そーなんだ。


「もう事件発生から30分以上経っているというのに・・・
なんなんだあの奴達!
誰も中入ろうとしていないじゃないか!!


あれじゃぁゴールデンウイークの開店待ちかァレはぁ!!」


と、鼻息荒く叫ぶ女が指す向こうには確かに「何ァレ!」というくらい、美術館の玄関前で警察官やなんかごついものを着た特殊舞台が、車を盾にしているようにたむろしていて、まるでドアが開くのを待ってるように前へ進まない。

かけつけた救急は逃げて来て怪我を負った人を手当てしたり運んだりしているだけだ。