ちょうどそのとき、すっと夜風が部屋の中を通り抜けた。

開け放していた窓の外を眺めると、ゆらめくカーテンの隙間から、くっきりと輝く満月が見える。


何故かそのとき、満月に「おいで」と誘われたような気がした。


私は急いでそこら辺にあった紙袋にチョコレートを詰め込むと、コンビニに行くと言って家を飛び出し、

近所の小さな児童公園に向かった。


住宅街の外れの小高い丘の上にある児童公園からは、周囲に視界を遮るものがない。

きっと満月が間近で大きく見えるはず。


私は満月を味方にこの憂鬱な儀式を終わらせ、苦いだけだった初恋と決別することに決めた。