「何ていうか……俺の場合、中川みたいに特別なきっかけがあったわけじゃないよ。

ただ、毎日中川と話してると下らない話でも楽しくて、そのうち笑った顔がかわいいなとか思うようになって、

気がついたら目が離せなくなってた。

で、好きなんだなって自覚して――…」


田中くんは手に持っていたハート型のチョコレートを口の中に放り込んだ。


「……だけどすぐに山本のことに気づいて。

他の男を好きな女の子のこと、好きになってる俺ってバカ?

って色々悩んだりへこんだりしたけど、しょうがないよな。

自分の気持ちを止めるとか、そんな簡単にコントロールできないし」


そう言って、田中くんは照れくさそうに笑った。

彼の言葉とその笑顔が、私の心の深い部分にじわじわと染みこんでいく。