秘密の時間



もうお昼休みも残り少ないこの時間、食堂に人はまばらだった。


空いている窓際の席に座り、お弁当を広げる。


いつもなら必ず葉子ちゃんと一緒にお昼を食べていたから、ひとりぼっちでお弁当に箸をつけるのは、何だか寂しかった。



そんな事考えてるうちに、お昼休みの終わりを告げるチャイムは鳴り、この広い食堂に私一人になってしまった。



食堂のおばちゃん達ももう後片付けを始めていて、手付かずのお弁当だけがいつまでもテーブルの上にあった。



「食べないのか?」



お弁当を見つめたままぼんやりしていると、急に頭の上で声がした。



その声に促され顔を上げると、定食を載せたトレイと部長の顔がそこにあった。


「さっきはありがとう。
少し調子悪くてな、まさか中村に気付かれるとは思わなかったよ」

「……」

にっこり微笑む部長。



だいぶ先ほどより顔色が良くなって、私の前に腰を下ろすと定食に箸をつける。


「美優はお弁当作ってくるのか」

「……」



小さくぼそり呟いた部長は私のお弁当をじっと眺めている。



私はおにぎりを一口噛ると、そっと部長の前にお弁当を差し出した。



「もし良かったら…、どうぞ」

「……」