秘密の時間



その頃私はトイレに駆け込み、溢れだした涙を思う存分流していた。


部長の微笑みは誰の物でもなくて、部長の言葉も誰の物でもなくて…、何一つ私の為の物なんて本当は無かったんだ。



あのおでこのキスだって、帰り道手を繋いだのだって、そこに特別は無かった。


酔っ払った部下に掛けた慈悲。そう思えばすべての事の辻褄が合う。



「美優、居るんでしょ?ココ開けて」


トイレの個室に閉じこもりめそめそ泣いてる私を見つけ、葉子ちゃんが声を掛ける。


「…葉子ちゃん…」


泣き過ぎて擦れた声。


それでもまだ止まらない涙に私はハンカチで目頭を覆い、移を決してトイレのドアを開ける。



葉子ちゃん……



飛び出した途端、彼女に抱きついた。