「あっ、ごめんなさい。すぐに仕事戻ります!」


ぼんやりし過ぎて休憩の時間はもうとっくに終わってしまっていた。


だからそう言って席を立つと、部長の手がすっと伸び再び席に戻される。


「そうじゃないよ。中村」


部長は困り果てた表情を張りつけ、腕組みをして私を見下ろす。



えっ、違うの?


だけど何が『違う』のか分からなくて、再び座り込んでも落ち着かない。



「中村、あのな…」

「そう言えば、金曜日はお世話になりました」


部長の台詞を遮って、言葉を紡ぐ。

部長はそんな私の意外な態度に、何となく返事をしたが、それっきり部長は黙り込んでしまった。



私はと言うと、ドキドキと煩い鼓動と、部長とのこの時間を大切にしたい反面逃げ出したい。そんな矛盾した思いに支配されていた。


「あのー部長、お話しないなら仕事に…」

「おっ…、そうだな。悪かったな、中村」


そう言うと部長はふっと視線を逸らした。



何が言いたかったんだろ?


何となく気にはなったが、仕事にも戻らないと残業という居残りになってしまう。


それだけは避けたくて、私は急いで自分の持ち場へ戻った。