恩田さんの後ろ姿を見送って、ふとこの場所に部長とふたりきりなんだな。なんて改めて思った。
「さぁ、中村、帰るか」
部長はそう言うと私に背を向ける。
その背中に置いてかれないように足を前に出した途端、何故か足が縺れ畳の上で派手に転がってしまった。
「ぃたっ…」
「だ、大丈夫か?中村」
私の派手に転んだ音にその背中は振り返る。
「おまえ、本当に酔っ払ってたんだな」
なんて言いながら、近づいて来る部長。
転んだまま起き上がらない私に手を差し出した。
「ほら、立て。それとも、立てないのか?おんぶするか?」
余りにも子供扱いにムッとしたけど、見上げた部長の顔は真剣で、まんざら冗談を言ってる風には見えない。
「ほら、大丈夫か?」
部長の手に掴まり立ち上がると、今度は勢い余って部長の胸に飛び込んでしまった。
あっ、ど…どうしよ?


