『駄目だよ』の意味も分からずに、私はそれでも彼に手を伸ばす。
だって、彼にはそんな表情似合わないから。
「美優、そんな事されると我慢出来ないんだけど」
「………」
我慢なんて必要ない。そう思うけど……。
巧さんは優しく私の頭を一撫でし額にキスを落とすと、いつの間にか私から離れていった。
なんだかそれがもどかしくて、私から離れていく彼の腕を掴む。
「巧さん」
「美優、大丈夫。俺はここに居るから。美優に無理はさせたくないから、もう少し眠りなさい」
「………」
無理なんて、私は全然大丈夫なのに。
仕方なく言われるまま、目を閉じる。
でも、私の手は彼の腕を掴んで離さないでいた。
すると、彼は自分の腕から私の手を優しく剥がし、その私の手をそっと優しく両手で包み込んだ。
「美優はもう、俺のもんだよね」
薬指のリングに触れながらそう呟いた巧さん。
その台詞を耳にした私は再び目を開け、彼を見詰めた。


