そう、彼はヒーローじゃあない。
生身の人間なんだ。
だからいつも強いだけじゃあない。その強さは鎧なんだ。
その下には弱さだって隠し持ってるんだ。
私は今まで彼の何を見て来たんだろ?
「ごめん美優。
俺はやっぱり美優の事、何があっても手離せない。だから、ずっと俺の側に居て。俺の事嫌いにならないで……」
弱々しさを全面に引き出してきた巧さんも、もしかしたら私みたいに不安なのかもしれない。
それに今さら気が付くなんて、私って今まで自分の事しか考えてなかったって事かな?
まるでこごなっていた糸がほどけていくみたいに、私の心の中にある不安が少しずつほどけてく。
「巧さん、私……」
なんて言えばいいだろ?なんて伝えれば彼は安心出来るだろ?


