秘密の時間




どうして上手く伝わらないのだろう?



私の気持ちが巧さんに。



ちゃんと彼に伝わって要ればこんなにも切なくならなくてすむなのに。



言葉全てを費やしても、伝わらない事ってある。



それはきっと育った環境や感性の違いだったりで生じるのだと思うけど、そのもどかしさが余計に私の目元を潤わす。



「やっぱり大丈夫じゃあなさそうだな」



私を心配そうに見下ろしている巧さんの姿が一瞬私の視界から消える。



それが余計に不安を煽り、私は横になっているにも関わらず必死に彼に手を伸ばす。



「美優、まずは熱を図ろ。俺はちょっと隣の部屋に体温計を取りに行くだけだから……」


「……いや」



必死に手を伸ばし彼の服の裾を掴む。


そしてなだめる様に私に語りかける巧さんの台詞を私は遮った。


「……お願い、行かないで。一人にしないで」


「美優?」


「……お願い」