どうぞ。と勧められるまま、目の前に出されたカップに一口口をつける。
甘い香りにふわふわと上がる湯気はなんだか乱れた胸の内をそっといざめてくれる。
『彼の本気』その言葉だけが頭から離れなくて、私は暫くカップの中の茶色液体を見詰めていた。
けど私にはどうやっても答えを導きだす事はできない。
やっぱり、まだまだ経験が足りないから?
「あのさ、お嬢さん。
頭で考える事には限界があるんだよ。行動に起こしてごらん。
きっと彼も……大橋くんも後悔をしたくないから、君をわざわざここへ連れて来たんだと思うよ」
「………」
マスターの言ってる言葉の意味がよく掴めない。
掴めないから、必死に考え理解しようとする。
マスターはそんな私の心が読めるのか、再び語り始める。
「……あのさ、他人の事を考える事も大切だけど、一番は自分じゃあないのかな?
もっと自分に素直になって彼にぶつかってみたら。
彼ならきっと、受け止めてくれる筈だから」


