な、なんで?
なんでいつも彼は優しいのだろう?
それは私が子供で彼が大人だから?
私の手が彼の裾から離れたのを見届けから、巧さんは私の頭をひとなでし、私に背を向け扉に向かった。
私はそんな彼の背中を今は見送る事しか出来ない。
「愛されてるね。大橋くんに」
「え?」
俯いた私の視線の先に湯気が立ち上るカップが置かれる。
私はその言葉と共に置かれたカップから視線を上げると、その視線の先はマスターにたどり着いた。
「でも、相変わらず不器用な男だよね」
私の視線がマスターに釘付けになる。
マスターは何を語り始めるんだろ?
「君はまだ若そうだから、男心なんてわからないよね。
でも、あれが彼の本気なんじゃあないのかな?」
本気?
本気ってどういう事?


