秘密の時間




温かなコーヒーを頂きながら、外を見れば雨がゆらゆらと降り出していた。



「とうとう降り出したね」


「………」



私はなぜか巧さんの一言に相づちすらうてなくなっていた。



正直、どうしたらいいのか分からない。



あんな気弱な巧さんを見たのは初めてだから、



私はどんな態度で彼に接したらいいの?



「もうそろそろ出ようか。

雨が降ってるから車持ってくる。美優は少しここで待ってて」


「………」



そう言い残すと彼は立ち上がった。



けど私は、少しでも彼と離れるのは嫌だった。



だけど、それを上手く言葉に出来ない。



出来ないからなのか、なぜか自然と私の手は伸び、彼の服の袖を握り締めてた。



「……美優?」



彼の服を握り締めた手を不思議そうに見詰める巧さん。




行かないで!一緒に居て。



どうしてもその一言を伝える事が出来ない。



言ってしまったら、私の我が儘がどんどんエスカレートしそうで。



そんな私の気持ちを察したのか、巧さんは私を説き伏せる様に優しく語りかける。



「美優、すぐ戻るから。美優を雨に濡らして風邪なんて引かせたくないから、

だからもう少しだけ、ここで待ってて」