秘密の時間




いつもは私よりお寝坊なのに、今日は何かあるのかな?



彼の隣に居ても、いつもと違う彼の纏う雰囲気にいつの間にか不安が顔を出す。



彼だけには気付かれたくない不安な気持ち。



そんな気持ちを誤魔化したくて、彼に気付かれない様に、テーブルの上のカップに手を伸ばした。




「久しぶりに遠出でもしないか?
いつも近場ばかりじゃあ、飽きるだろ」


「……えっ?」



あまりにも予想外な彼の台詞に、私はカップを手にしたまま隣に座る彼の横顔を見上げる。




その横顔はなんだか優しさに溢れていて、だから私はその横顔からさっと目を逸らした。



考えたくはないけど、こんな時まで考えてしまう事。





それは、元奥さんもその眼差しで見つめていたのだろうか?



そんな思いが胸をせしめるから、余計に不安ばかりが広がり始める。