ただ耳元で囁かれただけで、顔を真っ赤に染める私。
そんな私に意地悪するように彼はチュっと唇を耳元に寄せる。
そんな中、突然「チン」なんて電子レンジからの音に、ビクリと身を揺らす私。
巧さんはそんな私をギュッと抱き締めた。
「……驚きすぎ」
またもや意地悪に、耳元で囁く巧さん。
けど、その腕はなかなか私を離さない。
「た、巧さん。せっかく温めたお料理が冷めちゃいます!」
「……ああ」
トーンの低くなった声と同時に、彼の腕が私から離れていく。
◇◇◇
テーブルに並べられたお料理を美味しそうに食べる巧さんを、私は頬杖を付きながら見ていた。
時々箸で摘まんだ料理を私の目の前に、あーん、なんて食べさせてくれて、なんともほっこりとした時間が二人の間に流れる。
こんな時間ばかりで埋め尽くされれば、きっと悲しくはならないのに……。
そして、どういう訳か幸せのど真ん中にいる様な時ほど、とりとめもなく寂しかった気持ちがそれを阻止しようとする。
「美優、どうかしたか?」


