そして、連れてこられたのはちょっとこ洒落たイタリアンのお店。
予約をしてあったのか「恩田です」と店員に告げると、店内にすぐ案内された。
真っ白いテーブルクロスの掛かった丸いテーブル。
中央の細長い花瓶には一輪の綺麗な花がしおらしく飾られている。
なんだか仕事上がりの洒落っ気のないスーツを着ていた私はなんとなくそんな景色に落ち着かない。
席につき、メニューを渡されたけれど、あまり馴染みない名前ばかりか連なるものだから、ただただメニューを見入るしかなくて、それこそ固まってしまう。
目の前に座る恩田さんはと言えば、店員さんにもう何かを注文している。
「美優ちゃん、決まった?」
「えーと、よくわからなくて…」
「……」
どうしよう。
世間知らずな奴。なんて思われたかな?
でも、分からないものは頼みようがない訳で…なんて勝手に心の中で言い訳をした。
「じゃあ、僕のと一緒でいい?あと飲み物は…」
「おまかせします…」


