秘密の時間



まぶしい位の笑顔を湛え私の前に立つ彼は、職場ではちょっと見せないあどけなさの残った表情を見せる。


「あのー、ごめんなさい。遅くなって…」



そんな笑顔を見たら、本当に申し訳ないな。と思った。


彼が目の前に立ちはだかってるから見えないが、例の女の子達は彼がその場から去ると同時にすーっと笑顔は消え、彼の向かった先を睨み付けている。



そう、私の事を。



それに気付いてしまったから、なんだか此処は居心地も悪かった。



「あのー」

「ん?」

「さっき一緒にいた女の子達、いいんですか?」

「さっき?」

「…私が来る前まで話してた女の子…」

「ああ、いいのいいの。気にしないで!」

「……」



そう言うと恩田さんは私の肩を素早く抱いて、店を出て行く。



そんな彼のいきなりな行動に、ドクンと大きく高鳴りだす鼓動。



妙に熱い頬に私は俯いて従うしかなかった。