そんな彼に流されそうになった時。
グゥーーー。
なんて私のお腹が鳴った。
そのお腹の音が恥ずかしくて、真っ赤な頬も見られたくなくて俯くと、
クックッ…、と声を押し殺し笑っている彼の姿が目に入った。
「ごめん、ごめん…。
こんな時間まで仕事頑張ってたんだもんな。
腹も空くよな」
彼は今まで私を抱き締めていた力を緩め、大きな手はいつの間にか私の頭をぐじゃぐじゃと撫でていた。
「ルームサービスでも取ろうか。
俺も何も食べてないからお腹すいた…」
そう言うと私から身を剥がし、部屋の電話で何か注文し始めた。
私はその間その場から動けず立ったまま、部屋を見渡した。
高価な調度品や家具。
それにかなり広々とした部屋の間取り。
きっとここはスイート並の部屋。
こんな所に泊まれるなんて、それだけでもドキドキなのに、それ以上に彼のお財布事情が気になる。
そんな感じだから、素直に足を前に踏み出せない。
「美優、大丈夫。心配しないで。
ここは…義兄さんからのプレゼントだから……」


