顕著にそんな表情が現われたらしい。
ふぅー、と息を吐いた部長は私に分かりやすく話し始めた。
「美優、ごめん。
俺の立場から考えると、やっぱりちゃんと上司に伝えておいた方がいいと想うんだ。
遊びとかそんな軽い付き合いにしたくないから…。
それに、そう伝えておけば、変な噂に上司も耳を貸さないだろ。
それに俺は一度結婚に失敗してる訳だし」
「…失敗?」
「ああ、まだ美優には話してなかったね。
とにかく、だ。
俺達が真剣に交際してることだけアピール出来れば…」
「まっ、待って下さい、部長」
「ん?」
「その、…失敗って」
私達は完全に足を止めてしまった。
でも、ちゃんと話して欲しい。
その失敗した結婚の事を!
でも、今はその話を聞いている時間もないのかもしれない。
だけど、どうしても気になる。
「…じゃあ、今日は止めとくか。
そっちの話が先かな?」
部長は私の表情から素早く何かを読み取り、そう言葉を紡ぐ。
けど、恩田さんの行動を考えると、そんな猶予私達にはない気もする。
「美優は、どうしたいの?」


