秘密の時間



言われた通り早めにフロアに辿り着いた。



部長はもうすでに自席に着いていて私を見付けると、少し頬を緩める。


が緊張しているのかどこかいつもより表情は硬い。




「中村、おはよう。


じゃあ行こうか」




そう言って立ち上がる部長は私の事を『美優』じゃあ無く『中村』と呼んだ。



確かにフロアには私たちの他にもちらほらと人はいる。



それでも、なんとなくその呼び方が妙に他人行儀な感じがして、ほんの少し寂しい思えた。



部長の後を着いていく私は、部長の背中をまじまじと見つめていた。



するといきなり部長の手が私の腕を掴み握り締める。



「部長…」



その小さな呟きに部長は私をしっかりと見つめて、大きく頷いた。



心配するな。


まるでそう言ってるみたいに思えた。