近くの喫茶店でお茶をしながら部長を待つことにした。
ちゃんと今のうちに心の準備をしとかないと、部長が来たときにまともに話せない。
とにかく、部長に立ち障りなく恩田さんの事をどう伝えたら良いか、
そればかり考えていた。
一時間と少し過ぎた頃、携帯に着信があった。
『今、どこ?』
少し緊迫した部長の声が耳を掠めた。
「会社に近い喫茶店です。『アベニュー』って言う…」
『分かった。すぐ行くから待ってろ』
そう言うと電話すぐに切れ、ツーツーという機械音だけが耳に残った。
そして本当にすぐ、部長は喫茶店の前に現れた。
窓ガラスをトントン叩いて私の存在を知らせると、ほっとした表情を見せる。
すぐさま店に入り、私の目の前に腰を下ろすと、
部長は真剣な眼差しで私を射ぬいた。


