秘密の時間



「中村…」



少し憂いを含んだ部長の声。



ああ、私、困らせてる。


分かってるのに、どうにもならない。



「美優…」



急に名前を呼ばれ顔を上げると困り果てた表情の部長がいた。


「ごめん…なさい…」

「美優は謝らなきゃいけない事、したのか?」

「そうじゃあ…なくて…」

「……」



ああ、駄目だ。


もうぐちゃぐちゃで、何が何だかわからない…。



俯いたまま自分の爪先を見つめていると、ぎこちなく肩に触れられた手が、くるりと私の向きを変える。



そして、優しく背中を押し出した。


「電車、来るぞ! ほら、帰ってゆっくりしろ!!」


さっきとは打って変わった明るい声が聞こえて、振り返ると部長は優しく微笑んでいる。



「…部長」

「ほら、早く行け!」