どうしよ……。
いきなりのピンチに私はただ固まる。
けど、ちらほらと人が行き来するここではきっと、部長に従うのが得策だ。
部長はチラッと腕時計を確認してから、私の腕をギュッと掴んだ。
まだ人がいる。
人前でこんなことしたら、私達の関係がばれてしまう。
そう思うとこの手を振り払わなければいけないのに、その手は温かくて、優しくて振りほどく事が出来ない。
「あのー…」
どうにか振り絞って出て来た台詞。
けど、すぐに部長の一言で掻き消された。
「話がある…」
話し?
それって、一体…?
腕を引かれ辿り着いたのは、非常階段のスペースだった。
滅多にここには人は入って来ない。
こんな所に私を連れてきて、部長は何をするつもりなの?
ドキドキも去る事ながら、不安も押し寄せる。
やっと掴んでいた腕を離した部長は、ひとつ息を吐いてから話し始めた。
「何があった?恩田と」


