のどかな昼下がり、水色の可愛らしい造りのお城の中庭で、恒例のティーパーティが開かれていた。

「それでね、セイドリックったら酷いのよ!この前なんて…」

すっかり元のように仲直りしたのか、のろけなのか愚痴なのかわからないような事をレイシアが話す。
その表情は楽しそうなのだ。

「本人の前で手厳しいね」

セイドリックは苦笑しながらも、ミリアに楽しそうに近況を話すレイシアを愛しげに眺めている。

「もう、いいじゃないの!それよりも、あなたたちはどうなの?」

子供らしく、好奇心の篭った目でミリアにそう問いかけると、レイシアは身を乗り出した。
ミリアは苦笑すると、隣で涼しい顔で紅茶を飲んでいたライネを振り返る。

「仲良しだよ」

さらっと言われると、ミリアは赤面せざるを得ない。
確かに、クイーンとして…また、ライネの恋人としてここに残る事にしてからは、本当に楽しい生活を送っていた。
 魔女につけられた傷も今は癒え、少しずつこの世界の事もわかってきた。
家族のことを懐かしく思わないわけではなかったが、こっち側の方が今ではミリアにとってしっくりきてしまう。
 何かの歯車が一つでもかみ合わなければ、今こうしてここで笑いながらお茶を飲んでいることもなかったのかと思うと、ミリアは不思議な気持ちになった。

「さて…そろそろ戻ろうか」

「もう行ってしまうの?あ、今度来るときは、ミリアのメイドの猫ちゃん…なんていったかしら?」

「ネーネ?」

「そう、あの子も連れてきて。お願いよ!」

ネーネが聞いたら尻尾を巻いて逃げ惑いそうなお願いをされ、ミリアは苦笑いを浮かべた。
 レイシアの城を後にし、二人で馬車に乗り込んでいると、ふと初めて二人で馬車に乗ったときのことを思い出す。
あの時は、まるでこの世の絶望全てを背負い込んだような気持ちがしていたものだ、とミリアは思った。
それでも、今はこうして二人で隣に座って、いつか訪れる未来のことを話す事が出来る。

「明日は一緒に、私の領地を見てまわりましょう」

「そうだね」

他愛もない会話を愛しいと思うことは、至極当たり前のことだろう。
それはミリアにとっての真実で、この不思議な世界にとって…いや、それはどこに居たとしても必要なものだとミリアは思った。

「魔女も、こんな気持ちを知っていたら、きっとあんなふうにはならなかったんじゃないかしら」

「そうかもしれないね」

ライネが頷くので、ミリアは微笑んだ。
 魔女は世界の歪み。
ディモンの本にはそう記されていた。
それならば、もしまたこの世界に蓄積されていく歪みが意思を持ったとしても…次はあんなに悲しい存在にならなければいいのに、とミリアは願う。
 おとぎ話のようなこの世界が、本当の楽園のようになればいい。
ミリアはそうなるために、何が出来るだろうかと思った。

「一緒に考えていこうよ」

ライネは優しく言うと、ミリアの頬に優しく口付けた。
ミリアは頷くと、しっかりとライネの手を握った。











FIN.