「会った時からずっと考えていたんだ。澪さんを好きになっていいのかって。
君はぼくの患者であり、20才も年上の家庭を持つ人だ
よりによって何一つぼくの自由になる人じゃない。
でもこう思ってること自体がもう好きになってるんだよね。
澪さんが診察室を出てってからもう会えないと思うと正直たまらなかった。
気が付いたら白衣を脱いで君を追いかけていた。
で今ここに座っているのさ。
冷静になったら考えなきゃいけないこと山ほどあるけど
でも運命ってこんなもんさ。きっと。
自分じゃどうにもできないから運命っていうんだろう。」
横浜につくまで私たちはおたがいの手を握り合っていた。
着いてからも私たちはお腹の減るのも忘れ2人
ホームのベンチに座り話した。
「少しでも迷っているならこのまま帰って。あなたのこと怒ったり恨んだりしないから
その気持ちだけで大丈夫。生きてゆける。」
「何を迷う必要があるの:?僕は何もなくしてはいないよ。君のいう輝かしい未来も
医者としての道も・・・・澪さんの心を手にいれただけ。1番欲しかったものをこの手にしたんだ
心配はいらないんだよ」と言って私を力強く抱きしめた。
涙があふれた。
「ほんとに、先生」
「ああ、ほんとに。」
2人はじめてのくちずけをした。
頬に触れる先生の指先が少し振るえていた。
生まれて初めてのくちずけのように2人とも緊張した。
風を残してのぞみが通り過ぎて行った。
「やっぱり僕たちが出会ったことは奇跡だった」

手をつないでホームを二人歩いていると真正面に夫の
顔があった。繋いでいた手を離した。
夫は顔を強ばらせ近ずいてきた。
「遅いので迎えに来たよ」笑いもせず
そう言って、私の背を促した。
「帰ろう!」
まるで先生から私を毟り取るようにして
先生には何も言わず、振り返る私を無理やり
連れていった。