会社からの帰り道。
あたしはちょっと可愛いルームウェアを買ってみた。
スウェットじゃなくて、今日からはこれを着て過ごす!
そう心に決めて今日の晩ご飯のおかずを考えながら歩いていた。
「西崎?」
すると、不意に誰かに名前を呼ばれた。
慌ててキョロキョロ周りを見回せば、スーツを着た若い男性がこっちを見て軽く手を挙げた。
「横田君!」
「やっぱり西崎だ。久しぶり」
高二の時同じクラスだった横田君は、あの頃よりも顔立ちが少し大人びていた。
一度だけ告白されたけど、その時にはもう爽汰と付き合っていたので丁重にお断りした記憶がある。
「今会社帰り?」
「うん。横田君も?」
「そうだよ。
……にしても、本当に久しぶりだな。
西崎、何か綺麗になったな」
「ちゃんとお化粧してるから」
「ははっ、そっか。
うん、でも本当に綺麗になったよ。
大人になったって感じ」
「ありがとう」
誰かに褒められたのって久々だな……。
いつも家でダラけた格好をしてるから、可愛いなんて言葉は爽汰に言われなくなったし。
……でも、それも昨日まで。
今日から変わるんだから!