そこであたしはさっきユカに言われたことを思い出す。

……あたしからアピールするんだっけ。

好き好きアピール……。

最近好きなんて言ってないからな……。


「あ、あの、爽汰……」

「んー?」


テレビを見ながら爽汰が返事をする。

……ちょっとはこっち見てよ。


「爽汰、す……すっ、」

「酢じゃなくて醤油だって」

「……はい」


醤油ですか、ああそうですか。

分かりましたよ、持ってきますよ。


醤油をテーブルに置き、次のチャンスを伺う。


どうしようかな……。


「……?
何?俺の顔に何かついてる?」


あまりにもじっと見過ぎたのか、爽汰が不思議そうな顔をしながらこっちを見た。

やっと見てくれた……!

ちょっと感動しながら口を開く。


「あのね、爽汰!好きだよ!」


ストレートに想いを伝えてみた。

ちょっとドキドキしながら爽汰の返事を待つ。

すると……


「違うよ、これはキスだろ」

「……は?」

「キス。言われなくても分かるって。
俺、キス好きだし」


……どうやらご飯に出した魚のキスを言い間違えたと思われたらしい。

そんな言い間違いしないわ!

あたしの勇気を無下にすんな!


……とは言えず、ただ黙ったままご飯を食べる爽汰を見つめる。


はぁ……。


「……お風呂沸かしてくる」


あたしは心の中で盛大に溜息をつきながら部屋を出て行った。