「……この前好きって言ったら、キスの言い間違えだと思われたっけ」
「え……あれ、本当に俺に好きって言ってたの?」
「そうだよ!」
「マジか……。
いや、薄々そうかなとは思ってたけど……。
春菜って時々ボケをかますから、てっきりキスの言い間違えだと……」
「そんな言い間違えしません!」
もう……。
あたし、そんなにボケてないから!
「あー、今本当に幸せだわ。
俺の腕の中に春菜がいる」
「ね、そういえば……。
仕事で帰りが遅くなるっていうの、あれも嘘でしょ」
「うわー、あれもバレてたか。
さすがに9年はダテじゃないな」
そう言って爽汰は笑う。
爽汰が分かりやすいだけだと思うけど。
「あれは……本当はもっといいムードの場所で言うつもりだったんだけど。
もう今更カッコつけたって仕方ないから……いっか」
爽汰はジャケットのポケットからベロア生地の四角い小箱を取り出す。
「え……?」
「去年からずっと決めてた。
今年のこの日、春菜に言おうって」
爽汰がパカッと小箱を開けた。
キラリと光る指輪。
「仕事帰りにいろいろ準備してた。
だから最近一緒にいれなくてごめんな。
……でも、やっと言える」
爽汰があたしの瞳をじっと見つめる。
柔らかく微笑む爽汰。
そして……
「春菜……俺と結婚してください」

