でも、まだ疑問は残ってる。
あのお弁当。
あの時、爽汰はあたしから目をそらして話した。
ウソをついてる時の癖。
「あのお弁当は?」
「弁当?」
「今月何とかなりそうだからいらないって言ってたけど……ウソでしょ」
「……あれは……。
……言わなきゃダメ?」
「……おいしくなかった?」
そう聞くと、爽汰はブンブンと首を横に振った。
「まさか!春菜のご飯は美味いよ。
そこに嘘はない」
「じゃあ、どうして?」
「……あの日、昼休みに弁当食べてたらさ。
俺が弁当なんて珍しいから、同僚達が寄ってきて。
そんで春菜の弁当が美味そうだから一口くれって言われて」
「うん……」
「仕方なく少しだけやったらみんな美味い美味いって言って食べてたんだけどさ。
……本当、恥ずかしいんだけど、ここで独占欲みたいなの感じちゃったんだよね。
春菜の手料理は俺だけが知ってればいい、みたいな。
何か見せるのすらもったいないって思って」
爽汰は本当に恥ずかしいようで顔をほんのり赤くさせていた。
「俺いくつだよ、って思ったよ。
本当にガキみたいだなって。
あー……もうダメだ。
何か俺、超カッコ悪い……」
「爽汰……」
「ん?……うぉっ」
あたしは勢いよく爽汰に抱きついた。
少しの隙間も許さないように、ギュッと。

