「春菜、なぁ、聞いて」


すぐに追ってきた爽汰はベッドの上で布団にくるまるあたしに話しかける。


「いや、聞きたくない」

「春菜……お願い」

「疲れてるんでしょ?早く寝れば?
だって、仕事忙しいんだもんね」


なんて、嫌味みたいに言ってしまうあたしは本当に子どもで。

布団の向こう側から爽汰の声が聞こえなくなって。


何やってるんだろう……と、自分で自分が嫌になる。

こんな意地張っても意味ないのに。

素直に爽汰の話を聞けばいいのに。


でも、それができない。


爽汰の口から何て言葉が出てくるか分からないから。

傷つきたくないから。


……だから、こうして逃げる。

あたしの悪い癖。



パタン、とドアが閉まる音が聞こえた。

爽汰が寝室を出ていった。


「っ…………………………」


……あたしは布団にくるまりながら静かに涙を流した。