爽汰は大きく目を見開いたまま固まる。

何、そんなにあたしに聞かれちゃマズイ話だったわけ。


「……あたし、もう寝るから」

「ちょ、ちょっと待て!」


グッと腕を掴まれる。

久々に触られた気がする。

この状況じゃちっとも嬉しくないけど。


「聞いてた?聞いてたよな、今の話……」

「だったら?」

「いや、その……」


急にソワソワし出す爽汰。

……何なの。


「……あのね、一つ聞きたいことがあるんだけど」

「え?」

「……最近帰りが遅いのって本当に仕事なの?」


あたしがそう聞くと、爽汰は分かりやすく視線をそらした。

……分かりやすいのって便利だけど。

……こうあからさまだと傷つく。


「仕事以外に何があるんだよ……」


……あたしとは目を合わせないまま。


「……もういい」

「春菜?」

「爽汰の嘘つき!バカ!大嫌い!」

「ちょっ……春菜!?」


子どもみたいな悪口を吐きながらあたしは寝室へと逃げ込む。