「好きはキスの言い間違えと思われるし、お弁当は拒否られるし、帰ってくるのが遅くてロクに話もできない……。
……浮気してんじゃない?」
「ちょ、ちょっと、縁起でもないこと……。
いや、それもチラッと頭をよぎったけど、爽汰に限ってそんなこと……」
「確かに、爽汰君ってそんな器用なことできそうにないもんね。
ていうか、高校の頃の春菜バカだった爽汰君はどこいったのよ!」
「あたしに聞かれましても……」
これが約9年の時が流れた結果というわけで……。
「あー、思い出すわー。
高一の頃、付き合う前。春菜を見るたびに頬を赤く染めてた爽汰君。
あんな分かりやすい奴、あたし初めて見たわ」
「そんなに分かりやすかった?」
あたしは全然気付かなかったけど。
「気付かなかったの、アンタだけよ。
クラス中が気づいてたわ、あんなん」
「え、そうなの。初耳」
「アンタ、ボケてるから」
サラッと何か言われた……。
「春菜、春菜って。
あたしと話す時、たいてい一言目には春菜って言ってたからね、アイツ」
「それ、昔他の人にも言われたことある……」
確か爽汰と仲の良かった人に。
アイツ、いつも西崎の名前出してくるんだよ。愛されてんね、って。
あの人、今何してるんだろう。
って……今そんなことはどうでもよくて。