「ただいまー」


横田君と話してたらちょっと遅くなっちゃった。

急いでご飯作らなきゃ。


「おかえり。遅かったな」

「ごめんね、すぐご飯作るね」


ちょっと雑にバックをソファの上に投げてエプロンをつける。


「いいよ、食べてきたから」

「え?あ……そっか」


後ろで結びかけていたエプロンの紐から力なく手を離す。


「それとさ、明日から帰るの遅くなる。
だからしばらく夕飯はいいや」

「しばらくって……どれぐらい?」

「とりあえず今週はいいや」


一週間……。

あたしは頭の中にカレンダーを思い浮かべる。

確か次の日曜は付き合い始めて9年目の記念日。

……忙しいなら、どこにも行けないかな。

日曜は昨日みたいに一日寝てるだろうし……。


「あと、弁当もいいわ」

「え……美味しくなかった?」

「そういうわけじゃ……。
何とかなりそうだから、今月。
わざわざ作らなくても大丈夫」


……爽汰は目をそらしながらそう言った。


「そっ……か」


……ウソついてる証拠。

爽汰はウソつくときは決まって目をそらす。


やっぱ美味しくなかったのかな……。

味付けはおかしくなかったはずだけど……。