「姫路っ目を開けろ!姫路――!」
桃太郎と閻魔の戦いの最中、目を開けない姫巫女の名前を呼び続ける。己の寿命を縮めていく心臓の痛みも全ては姫巫女を失う痛みのようで、一層紅蓮の心を掻き乱した。
冷たい手。青ざめた顔。“死”の恐ろしさが紅蓮を絶望に陥れようとしたその時。姫巫女の長い睫毛が微かに動き、瞼がゆっくりと開かれる。
「姫路――!」
「紅、蓮……?」
虚ろな瞳が、静かに姫巫女を覗き込む紅蓮を捉える。
暖かい体温。握られている手から、抱き締められている体から、姫巫女は懐かしい温もりを感じていた。暗い闇の深淵から掬い上げたのは、否定しながらも求めていた体温と声。
「何故、貴方が」
紅蓮に問い掛けたいことは沢山あった。
何故泣いているのか。
何故血を流しているのか。
何故また抱き締めてくれているのか。
しかし腹を貫かれた痛みで何一つ問い掛けることが出来ず、ただ紅蓮を見つめる。
「直に傷も塞がる……案ずるな」
紅蓮の言葉の通り、徐々に再生していく体。痛みは穴が塞がったと同時消え、気だるさと背中の印の熱だけが残る。背中の印は紅蓮に反応しているのか、熱が引く様子はない。
また、己の寿命が縮んだ。今度のはどれだけ寿命を削っただろうか。
「ごほっ!ぐっ」
「紅蓮っ……!?」
まだ上手く力が入らない体を起こし、咳き込む紅蓮を支える。背中を擦ろうと紅蓮の背中に触れた姫巫女だが、触れて直ぐに手を遠ざけた。
触れた背中が、酷く熱いことに気付いたのだ。
その熱は、己の背中にある印の熱と同じ――
まさか――

