不意に感じた殺気で身体中に悪寒が駆け巡った。
「――っ!?」
刹那、腹部にずんとした重みを感じる。何が起こったのか、頭がついていかない。
「姫巫女殿っ」
遠くから百済の声が聞こえ、姫巫女は正常を保つため必死に呼吸を繰り返し気持ちを落ち着かせる。
「貴様が姫巫女だな、遥々よく来たものだ」
地を這うような低い声が背後から聞こえ、振り返えるより先に自らの腹を貫く腕が視界に入り、声を失う。
荒い息が、やけにはっきりと脳に響いた。貫かれた腹部の痛みで視界が霞む。
「貴様はここで死ね、姫巫女」
引き抜かれた腕は閻魔の物であると、姫巫女は気づかずに意識を失った。
身体は地面へ崩れ、溢れる血が大地を汚す。大地と言えど岩で出来ているからか、血を吸うことなく広がり続けていく。
――同刻、口元を三日月に描く閻魔の後ろで空の雲は晴れ、姫巫女の血を吸ったように赤く染まる月が顔を出し始める。
預言の刻まで、後数刻――

