「百済殿、どうか私に構わず鬼の討伐を続けてください。私も微力ながら戦います」
傍らで庇うように控える百済へと伝えると、彼女は迷わず応える。
「今はあなた様の御身が大事ですわ。紅蓮が出てきた今、何が起こるかわからないのです。私から離れないでくださいまし」
有無を言わさぬように肩に置かれる手が、力がかけられる。
それでも引かず、姫巫女は続ける。
「百済殿、私はこの時のために…いえ、この時のためだけに生きてきました。この戦いを終わらせたいのです。力を貸してください」
「姫巫女殿……」
姫巫女の身にまとう空気に百済は姫巫女の覚悟を感じ、肩においた手を下げる。
「……わかりました。けして無茶な事はなさらないで。私も高麗、新羅、そして主もあなた様を守りますゆえ」
「…ありがとうございます、百済殿……」
翼を広げ向かってくる鬼の群へと身を投じる百済を見ると、姫巫女も着物から札を出す。
今、私にできる事。
それは少しでも多く鬼を封印し、皆の負担を軽くする事。
ここでじっと戦いを見ている事なんて私のなすべき事ではない。
預言の刻まであとわずかではあるが覚悟を心に刻みつける。
鬼の頭領閻魔を、そして息子の紅蓮を封印する。
そのために来たのだ。
込み上げてくる感情に蓋をし、印を結ぶと城を印で覆う。大きな印は身体に負担が大きかったが、気にしてなどいられなかった。
城は覆った。力の弱い鬼は姫巫女の印の中に入っただけで消滅していく。
邪気はどんどん減り、一番強力な邪気だけが残っていく。あと、少し――あとは滅するだけ――

