「あの日から俺は――」
鬼を殺す。二人の敵を捕ることを誓った。鬼の生き残りなど残しはしない。二度とあんな真似が出来ぬよう、鬼の血脈を根絶やし、皆殺しにしてやる――
桃太郎の瞳に宿るのは、憎しみと復讐の炎。
何も言えずにいる紅蓮に、桃太郎はとった間合いを詰め刀をぶつける。鬼神のごとき速さで振るわれた刀は、紅蓮の肉を切り裂く。
「まずは紅蓮、貴様からだ――!」
憎い、憎い、憎い――
刀から、覇気から肌を通して伝わる桃太郎の憎悪。紅蓮は禍々しさを増す桃太郎の覇気に顔をしかめる。
覇気の禍々しさは鬼と同等、最早それ以上――!
ガキン!と紅蓮の刀が寸前のところで桃太郎の刀を捕える。
この俺が、人間に圧されるだと……?
「面白い。お前の憎悪、何処まで強くなるか見定めてやる」
紅蓮の邪気が一層に強くなり、周りの重力を打ち消す。足元の土や石が覇気によって浮遊した。
人知を越えた闘いに、姫巫女は手を出せずにただ見守る。
空に浮かぶ月は、雲に隠れている。予言の刻まであと少し――
激しさを増す二人の戦いを前に姫巫女は息を呑む。
気をぬけば一瞬で命を奪われるだろう、双方一歩も退かぬ戦いに気圧されてしまう。
今まで姫巫女として鬼を封印した事は多々あったが、今眼前で繰り広げられているそれは全く次元が違う。
自分の無力さを痛感させられた姫巫女はぎゅっと唇を噛み再び心を決める。

