炎の柱に行く手を遮られながら無我夢中でもがくように進む…。


 意識が朦朧としてきてどこに進んでいるのかも分からないまま前進を続けていた。
 その時パラパラと降っていた雨が…雨脚を強めて大地に降り注ぎ始めた。


 その勢いは‥とまらず、まるで流れる滝のように大地を突き刺しながら地面を濡らす…。


 ふと…空をみあげる。


 雨はどんよりした雨雲からドッ…っと大量に大地に注がれオレの傷ついた身体も心も洗い流し清めてくれる恵みの雨に命をも救われた…。


 “…極めたな‥。”


 激しく打ちつける雨の中に仙人さまの声を聞き、空にむかってお礼の言葉を唱える…。

 “…ありがとうございました。”


 仙人さまの声に安心したオレの声が響きわたった。
 雨が炎を掻き消していく光景を見ながら崩れこんでいく。

 火柱はやがて恵みの雨により炎の丈を縮めながら徐々に沈下していく。

 その光景を静かに眺めていると何者かの気配を感じた…。

うっすらとした視界に何匹かの獣の匂いを感じる。


 ぼやっーとした視界の中に数匹の獣が近づいてきた。

 シルエットの形どる姿から推測すると…犬の姿にもみえる…。


 “ああ…逃げ延びた野犬たちか…。”


 シルエットの形どる姿はドンドン近づいてきた…。



 “参ったな…。”

 持てるだけの力を使い果たしたオレは逃げる気力すら使いきり、ただ訪れる運命を静かに過ぎゆくのをひたすら待つ事しか出来なかった。


 野犬たちは…オレの前に辿り着くとギョロっとした瞳で見下ろした。 




 …景色が歪む…。


 …感覚も遠のく…。


 ぼやけた視界に移る野犬たちはオレを囲み…尖った鼻先で匂いを嗅ぎ始めた。
 オレは抵抗さえも出来ず…瞼を閉じそのまま深い眠りに落ちた…。