夜は、兄弟揃って身を寄せ合いながら粗末な毛布で朝を待つ。
窓の外では、寒さの所為か、晴れやかな夜空に鬱陶しいほどの数の星が絨毯を敷いていた。
ふと、少年は凄まじい破裂音と人の声に目を覚まし、毛布を抜け出した。
「Fuite!!」
怒号と悲鳴が混ざり、耳をつんざくような音の集団が少年の鼓膜に襲いかかる。
「Flucht!!」
窓の下をのぞくと、そこでは戦争まがいが行われていた。
数人が逃げている。
大人数で追われている。
破裂音が鳴ったと同時に、寝間着姿で逃げていた逃亡者たちは石畳に倒れ、そして引きずられていった。
「見るな」
不意に後ろから目を隠された。
兄が、少年を窓の縁から引き剥がし、毛布の中へと連れ戻したのだった。


