「若い者は早く歩く」 老人はその背中を見送って小さく呟いた。 眼光が光れども、少年のように嫌悪も憎悪も浮かべない素直な目をしていた。 「早く歩いて死に急ぐ」 「俺はあんなに早く歩かないよ」 老人は、対抗するかのような元気な少年を見下ろし、穏やかな目でじっと見つめた。 すると老人は立ち上がり、少年にさえ背を向けて、沈みゆく日の光の中を帰って行った。