画家のゆび




逃げていく少年の背中に、思い弾丸が撃ち込まれた。



凄惨な銃声。



再び渦巻く悲鳴。



ああ母の声も混じっている。




倒れた拍子に落としたスケッチブックは少年の血で濡れていた。



それが嬉しくて少年は嗤う。



嗤う。




もう二度と誰もあの絵をみることはできない。





運命よ。



戦争よ。



人の血よ。



時代の波よ。





お前たちは私たちから命というものを奪っていくけれど。






「Ichbinglücklich…」




誰も、この指から大切なものは奪えないのだ。