「あはははははははっ!!」
少年は空を仰いで大きく笑った。
見ろ、奪ってやった。
炎よ、お前でなくたって人は奪えるものなのだ。
それは賢い数学者ないし科学者が悩む難しい数式を素人が解いて成し得たかのように、晴れやかですがすがしい瞬間であった。
証明することを済ませた少年は、さも満足そうに笑う。
笑う。
やがて人の声の渦の中に、事態を嘆く軍人共が駆けつけてきた。
人が死んでも騒がないのに、人殺しの死をお前たちは嘆くのか。
少年は銃を捨てた。
もとよりこの証明が終わった今では何の価値もない。
銃を捨ててスケッチブックを抱きしめて、彼は三つの屍に背を向けて走り出した。
「あっはははははははははっ!!」
ひどく気持ちのいい瞬間。
自分もたいがい、一線を越えていた。
だがそれは、奪われた三人とちっとも変わらないではないか。


