画家のゆび




少年は上着を脱いで、老人を食い散らかしている赤い炎を消そうと努めた。



「おい餓鬼、なにをしている」



その場を去ろうとした二人組が振り返り、訝しそうに少年の行動を眺めている。



「火を消したってその男は動かないぜ、もう死んじまったんだからな」



なおも燃える炎。



少年は同じように憎しみ滾るその目で軍人たちを睨み、牙を剥いた。



「死んだんじゃない、あんたたちが殺したんじゃないか!」



片方が目を剥いて食ってかかった。



「なめた口を叩くんじゃねえ、餓鬼が!」



「あんたたちこそ人のことなめてんじゃねえ、この人殺し、なにが軍だ、なにが役人だ、人殺し、人殺し!!」



「てめえ殺されたいか!!」



人通りは彼らを避けて行き過ぎる。



そのほとんどは哀れむ視線を少年に送っていた。




少年はスケッチブックを抱きしめる。




そして殺気立った彼らに向かって、しきりに人殺しと叫び、罵り続けた。