白い、虚無感の中に佇む、
黒いコートを着た青年。
全てをなし終えたかのようにゆっくりと白い空間を歩む。
苦しい、痛い。
助けて。
不意に右手を動かした。
そして、石を掴むようなしぐさで右手を握る。
閉ざされた神経細胞
そこから電気信号を放ち始める
少女は安心して眠りに落ちる。
暗い部屋、暗い気持ち。
そこから彼女は解放され
安堵が訪れる。
彼女は完治するのに7年かかると言われていたうつ病を患っていた
信じられない医師による新薬提供
横には医師に似た男の写真
医師はこの男は死んだと言った
少女は怖かった
自分はどうなるの
死んだなんて言わないでほしかった
お母さん、どこ？
お父さん、お母さんは？
お母さんの変わりにうつ病が少女の心に移りすんだ。
美しい彼女の神経細胞は鈍化した。
お母さん…
動かない私の時計
お母さんが買ってくれた時計
電池が欲しい
きっと医師もそう思っているだろう
医師は英語でリビングファインという薬を処方した
この薬の中に宿るは僕の弟
命と引き換えにして開発した薬
生を与えられた者を快活に
苦しみから楽に
弟は薬の中で
少女の苦しみと戦った
鎌を持った死神
母親にまたがる
鎌をかける
それを押し退け
青年は指を鳴らすと
死神はどこへともなく消え去った
微笑んだ母親
右手を握る
母親の温もりが
気のせいか広がる
少女は見た、母親、そして医師の弟を
この薬は新薬だ