「来須。どうした?」
その声と共に、専務の顔が俺の前に現れる
「あ、すいません。何でもないです」
やっと動いた足に俺はホッとする
「具合悪いなら、もう上がるか?というかお前顔赤いぞ?」
そう言って専務の顔が近づいてきたと思ったら、おでことおでこを合わせてきた
「熱はないみたいだな」
あまりにもビックリして俺は即座に専務から離れる
専務はキョトンとした顔で俺を見下ろすと、何かを悟ったのか、俺の頭を笑ながら撫でる
「悪い、悪い。うちの子供と同じ扱いして。つい癖でな。すまん」
笑いを抑えられないまま、俺の頭をグシャグシャにすると、背を向け、また歩き始める
...子供か。
俺は振り返ることなく、専務の後ろを追った
あの人が見ていたとは知らずに


