授業中、また眠気を誘われ目をつぶり重力に身を任せるように机にひれ伏していた。
いつの間にか夢の中へ…



“ワタシタチトノヤクソクハ？”
えっ？なんのこと？

“ワスレチャッタノ？”
何を言ってるの？
あなたがた達はだれ？

“シンジテタノニ…”
なにを？私を？

“ユルサナイ…”

その言葉が聞こえた瞬間私の周りにドロドロとした黒い液体があふれてきた。
私の体についたドロドロはまるで鎖のようにまとわりつき重りのように重い。
だんだんと身動きがとれなくなってきた。もう腰のあたりまで浸ってしまった。
もうダメだ…このままじゃ呼吸もできなくなる。
諦めかけたその時、小さな窓が見つけた。動かない体を必死に動かし手を伸ばした。けれどあと一歩のところで届かない。
私の体は限界に達したのか力が入らなくなっていた。

「美雪！あきらめんな！」

窓からまぶしい光とともに私にむかって力強い声と腕がのびてきた。
無意識に手を再びのばすと私の小さな手をその大きい手がつつみしっかりとつかむと勢いよいひっぱりだした。
すると、ドロドロは嘘みたいに軽くなって離れていった。


“あぁ、助かる。”


そう思って声の主を見ようと顔を上げたとき…


「おかえり、君をずっと待ってた」

その声を聞いたとき急に涙が出た。

なぜ？
あなたは誰？

温かい何かに包まれた。
抱きしめられていた。
私はもうひっぱりだされていたのか。
助かったんだという安堵の気持ちとともにもう一つの安堵の気持ちが生まれていた。
私はこのぬくもりを知っている。何もかもから守られている。そんな気がした。これを安心とよぶのだろうか。呼び方すらわからないこの感覚を私は手放したくなかった。
ずっとこのままがいい…。
安らいだ気持ちのままそっと目を閉じた。